【3464】 ○ 松丘 啓司 『エンゲージメントを高める会社―人的資本経営におけるパフォーマンスマネジメント』 (2023/04 ファーストプレス) ★★★☆

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1on1に加え、OKRや360度フィードバック、エンゲージメントサーベイなども解説。

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エンゲージメントを高める会社 人的資本経営におけるパフォーマンスマネジメント』['23年]

本書では、エンゲージメントは人的資本経営のキーファクターであり、エンゲージメントが高い組織は、優秀な人材を惹きつけ、人材の流出を防ぐとした上で、ではどうすれば従業員のエンゲージメントが高い会社を創ることができるかを説いています。

 第1章では、現在の人事・組織マネジメントの代表と言えるMBO(目標管理)は、ワークエンゲージメントに対してマイナスに作用するという問題点を抱えており、MBOはその歴史的使命を終えたとしています。そして、新たな「パフォーマンスマネジメント」のコンポネントとして、①OKR、②バリュー、③1on1、④360度フィードバック、⑤エンゲージメントサーベイを挙げています。

 第2章では、OKRについて解説し、OKRは一人ひとりの「これをやりたい」という主体的な意志のもとに立てられた目標を、測定可能な指標と組み合わせるものであるとしています。また、OKRでは達成度を評価しないため、「アンビシャス(野心的)」な目標を立てることができるなど、MBOとは異なるその特徴を解説しています。

 第3章では、1on1について解説し、1on1はパフォーマンスマネジメントの土台であり、その目的は、ワークエンゲージメントの向上にあるとしています。また、1on1における支援策として、メンバーへの理解・承認、目標設定支援、経験学習支援、キャリア開発支援の四つを挙げ、それぞれ解説しています。

 第4章では、評価とフォードバックについて述べています。まず「ノーレイティング」とは何か、レイティングなしでどう処遇を決めるかを解説し、さらに、「360度フィードバック」の意義や、OKRと360度フィードバックによるバリューの浸透方法(バリューの実践度を評価基準とする)、360度フィードバックの導入方法について説明しています。

 第5章では、キャリア自立の促進策として、人材開発会議やジョブポスティングについて紹介し、キャリア研修の在り方について述べています。第6章では、エンゲージメントサーベイについてその必須条件などを解説し、第7章では、変革マネジメントによる組織開発について述べています。

 著者の『人事評価はもういらない』(2016年/ファーストプレス)、『1on1マネジメント』(2018年/ファーストプレス)に続く本であり、1on1を中心に解説した前著などに比べると、OKRや360度フィードバック、エンゲージメントサーベイなども加わって、「パフォーマンスマネジメント」をより広角的に捉える内容となっています。

 一方で、全体として体系的によく纏まっているものの、概念的・抽象的なレベルに留まっている部分も多かったという前著までの特徴が、今回より色濃くなった印象も受けました(実務感がやや希薄か)。それでも、従来の固定観念を払拭し、新たな発想に至るための示唆を得ることはできる本だと思います(一応、○とした)。

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